新作小説「Crystal Doll」冒頭部分 #narou
昨日作ったばかりなので、まだまだ変更などなどあるかもしれませんが。
とりあえず「Crystal Doll(仮)」の冒頭部分を発表します。
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もはや何がそこにあったのかも分からない。
コンクリート、金属、土砂、そして血と肉と、濁った水。都市を守っていた壁と天井は破れ、ぽっかりと天に向かって開いた穴からは、夥しい量の黒い雨が降り注いできていた。
その都市の中心に程近いところに、一人の女が立ち尽くしていた。
彼女は手にした拳銃を慈しむように撫でていた。
彼女は何か呟いた。しかし、誰もそれを聞けず、その声はただ薄汚い雨の音に静かに流されていった。
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かつて地球は「青い惑星」と呼ばれていた。
しかし、今の地球は灰色と土気色の大気で覆われ、その外観は火星にもよく似ていた。とにかく、宇宙から地球を見る者がいたとすれば、そこに生命が存在しているとはおおよそ想像できなかっただろう。
この荒廃の原因は何だったのか。
西暦二〇三八年――それは静かに、しかし、苛烈に、世界を覆った。
人類が生み出した究極の生体兵器『|福音の徒(ゴスペルリーダー)』――。
究極の抑止力として生み出されたそれは、瞬く間に数を増やし、世界中に拡散した。そして数を増やす過程で、それらはやがて暴走し、造物主である人間を襲い始めた。
絶対的かつ恒久的な平和をもたらすはずであったゴスペルリーダーたちは、その人類の目論見とは全く裏腹に、人類を窮地に追い込んでいった。人類は持てる力を振り絞ってその侵攻に抵抗をしたが、結果として無駄に終わる。それどころか、それは大規模な環境破壊を引き起こし、人々をよりいっそうの窮地へと追い込んだ。
結果、人類は自らの生み出した兵器によってそれまでの住処から駆逐された。
生き残った人々は世界各地に地下都市を作り、そこに隠れ住んだ。……かくして人類は空を失った。
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連載プラットフォームは「小説家になろう」を考えています。
舞台は近未来で、サイバーパンクなSFになります。
この物語、約15年前に「Silent Sweepers」という名前でHPに掲載していたことがあるんですよ。
それを大幅リメイク(……原型をとどめない)して連載してしまおうという計画です。
連載開始の暁には、よろしくお願い致します。