「シスターシスター♡双方向性三角関係」第一話
「シスターシスター♡双方向性三角関係」、以下から連載分全部読めますが、このブログにも最初の1話のみ、全文掲載します。
昨夜、俺の頭に黒いウサミミが生えた。
それはよく覚えている。
俺の部屋には、俺の姉と先輩が訪ねてきていた。
それもなんとなく覚えている。
だが、そこから先は、ずっと夢でも見ていたのだろうか――というくらい、俺の記憶は薄らぼんやりとしている。
今日は四月二十三日で、満月の次の日だ。ついでに言えば、西暦は二〇一六年。そして土曜日。さらに言えば、ゴールデンマーケットの初日である。
一日の最初に日付と月齢を思い出そうとするのは、かれこれ三年くらい前からの癖だ。おかげさまで、今では三ヶ月くらい先までのお月様の予定が、スラスラと頭の中に呼び出せる。
腹時計的には、まだ午前六時くらいだろう。これもだいたい正確だ。時計を見るためにわざわざ重たい
……だが、全身にのしかかる、柔らかくも質量のあるこの
繰り返すが、今は四月だ。北海道札幌市の四月といえば、まだ「雪がようやく駆逐された程度」という時期である。いや、四月に雪が降ることすらある。簡単に言うと、寒い。だが、実家を出たばかりの大学一年生である俺には、この時期に暖房器具のような贅沢品を使う経済的余力はない。
そんなわけで、目を開ける前に、昨夜の出来事を整理しよう。
そう思ったその瞬間である。
「あぁん、ハルくぅん♡」
そのとろけるような甘い声と、顔に吹きかけられた強烈なアルコールの臭いで、俺は反射的に目を見開いた。もうこれは本能レベルの危機回避リアクションだった。
「ううっ!?」
最初に目に入ったのは、妖しく
思わず酸っぱい泡を吹きそうになった時である。
『キスするんだ、キス! 据え膳だよ! す、え、ぜ、ん! ボクが許す! キスするんだ! っていうか、キスして!』
俺の中の謎の声がテンション高く囁いた。――謎の声と言ったら謎の声なのである。
うっかりその誘惑に負けそうにはなったが、それを正気に返らせるほどに、そのうっすら開いた唇の周辺は酒臭かった。もう俺は状態異常である。
『何だよこの馬鹿、
朝からやかましいぞ、謎の声!
先の甘ったるい「ハルくぅん♡」は寝言だったみたいだが、とりあえず
そんな極楽ライクなシチュエーション(嗅覚除く)の
あ。
そういえば。
……どうしてこうなったんだっけ?
と、まぁ、こんな感じです。
なお、この1話については、頻繁に加筆修正されることがありますので、予めご了承くださいませ。